経費の不正な計上は犯罪?【弁護士が解説】

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

焦る女性

  • 経費を架空請求したら刑事告訴されますか?
  • 交通費を不正に受給したら犯罪となりますか?
  • 接待交際費の水増し請求で逮捕されますか?

当事務所の刑事弁護チームには、このような経費の不正な請求・受給に関するご相談がたくさん寄せられています。

刑事事件チームが経費の不正な行為について解説いたします。

 

 

弁護士の回答

経費の不正行為とは?

経費の不正行為とは、会社から認められていない経費の使用行為全般をいいます。

企業は売上を出すために、活動していく中で、経費(コスト)を必要とします。

例えば、広告費、営業活動のための交通費、取引先へ行くための出張費などが経費の例です。

企業にとって、重要なのは、「利益」(もうけ)を出すことです。

利益は、売上から経費(会社では「損金」ともいいます。)を控除した残りです。

  利益(もうけ) = 売上 − 経費  

したがって、企業にとって、経費を押さえることは、売上を上げることと同じくらい重要なのです。

そこで、経費は、会社が認めている場合に限って支出が可能となります。

また、支出できる金額については、必要な額でなければなりません。

そのため、会社が認めていない目的のために経費を使用したり、支出額が過大な場合、不正行為となって問題となります。

 

 

経費の不正行為の種類と成立する犯罪

経費の架空請求

例えば、実際には経費(広告費など)を支出していないのに、当該経費を支出したかのように装って会社に経費を申請し、その金銭を自分のために使用するような行為が典型です。

逮捕このような場合、会社に対する詐欺罪が成立すると考えられます(刑法246条)。

刑法第246条
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

刑法246条の実行行為である詐欺行為(欺く行為)は、財物・財産上の利益を処分させるような錯誤に陥れる行為をいいます。

経費の架空請求の場合、実際には当該経費を支出していないにもかかわらず、支出したかのように装って、経費を請求するので、詐欺行為に当たるといえます。

また、詐欺行為は、過去・現在の事実に関するものに限らず、将来の事実に関する内容も含まれると考えられています。

したがって、経費を支出する「予定」と偽って、経費を請求する行為も詐欺行為に該当します。

そして、経費を架空請求した結果、その経費を受け取れば、「財物を交付させた」として、詐欺罪が成立します。

 

交通費の不正受給

経費の不正行為では、交通費の不正受給は最も多いと言われています。

具体例としては、実際には支出していない交通費について、支出したと装って会社に請求し、その交通費を受給する行為です。

また、自宅から会社までの通勤手当を支給している会社は多く存在しますが、通勤手当の申請をする際に、実際には通勤しないルートを届出て、多額の通勤手当を受給する行為もこの類型に当てはまります。

交通費の不正受給についても、会社に対する詐欺罪が成立すると考えられます(刑法246条)。

 

接待費等の不正請求

接待交際費の不正請求とは、実際には接待などしておらず、個人的に飲み食いした飲食店の領収書を会社に提出し、会社から建て替えてもらおうとする行為をいいます。

また、接待は行ったものの、実際に使った接待費以上の額を水増しして請求する場合もこの類型に当てはまります。

このような接待費の不正請求は、会社に対する詐欺罪が成立すると考えられます(刑法246条)。

 

会社に提出する領収書を偽造していた場合

会社に提出する領収書を偽造していた場合は、「有印私文書変造罪」が成立する可能性があります(刑法159条2項)。

有印私文書変造罪の法定刑は、3月以上5年以下の懲役となっています(刑法159条2項)。

有印私文書偽造・変造罪については、くわしくはこちらのページをご覧ください。

 

民事上の責任とは

経費の不正行為については、上記のとおり、犯罪が成立し、刑事責任を追求される可能性があります。

また、次のとおり、民事上の責任も問題となります。

損害賠償請求

お金会社に対する詐欺によって、会社に損害が発生しており、社に対する不法行為が成立すると考えられます。

会社は、不正行為を行った従業員に対し、不法行為に基づく損害賠償請求を行うことが想定されます。

 

懲戒解雇処分

会社に対する不正請求は、その会社の就業規則に違反し、かつ、当該規則の懲戒解雇事由に該当すると思われます。

そこで、会社からは懲戒解雇されることが想定されます。

もっとも、不正行為の内容について、悪質性が軽微で、損害発生も小さい場合、懲戒解雇までは厳しく、諭旨解雇やその他の懲戒処分(出勤停止など)にとどまる可能性もあります。

 

 

経費の不正で逮捕や刑事告訴を回避するために

逮捕経費の不正行為が発覚すると、会社が警察に相談したり、被害届を出したりする可能性があります。

そうすると、捜査が開始され、容疑者を警察署に呼び出して事情聴取したり、いきな自宅に訪れることも考えられます。

逮捕されるか否かはケース・バイ・ケースですが、会社に対して事実を認めず、否定している場合、会社としても事実を明らかにするために、警察に相談する可能性はあるでしょう。

詐欺の証拠がある場合に、容疑者が容疑を否認していれば、逮捕される可能性もあると思われます。

逮捕について、具体的な要件などはこちらのページでくわしく解説しています。

 

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