知らずに詐欺に加担したら共犯になりますか?【弁護士が解説】

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

詐欺にについての質問です

振り込め詐欺グループに所属する知人から、振り込まれた金を取ってくるように命令をされました。

5万円という報酬に目がくらんで、協力してしまい逮捕されました。

わたしも詐欺罪の共同正犯になってしまうのですか?

 

 

弁護士の回答

共同正犯や幇助犯に問われる可能性があります。

 

詐欺とは

詐欺とは、重要な事実を偽って人をだまし、財産を交付させることをいいます。

代表的な例としては、オレオレ詐欺、振り込め詐欺、結婚詐欺、投資詐欺、保険金詐欺、無銭飲食などがあります。

ご質問のケースは、振り込め詐欺の事案です。

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詐欺罪への関与

詐欺罪への関与の仕方はいろんなケースがありますが、ご質問のケースではいわゆる「出し子」等に該当します。

詐欺によって被害者から騙し取った金員等を実際に取りに行く者を「出し子」、「受け子」といいます。

ATM等で振り込ませたものを口座から引き出す場合は「出し子」、宅配便で送らせたものを受け取る場合は「受け子」といいます。

逮捕の危険性が高いことから、振り込め詐欺グループの中心人物ではなく、新入りや事情を知らない第三者が担当することがほとんどです。

 

 

罪に問われるか?

事情を知らずに、指定された場所で金員を受け取ることを命じられたに過ぎない場合は、無罪となります。

ですが、多くのケースで起訴に至ります。

というのも、受け子、出し子も、「詐欺で得た金員かもしれない」くらいの認識はできた(していた)のではないかと警察・検察側からは疑って見られるからです。

そしてその確定的でない故意(未必の故意といわれます)すらないことの立証は、往々にして困難を極めます。

お金を受け取るだけで5万円等の報酬をもらえることは異常であり、普通であれば犯罪によって得たお金だとわかるはずだからです。

 

 

参考判例【福岡高裁 平成28年12月20日 平28(う)192号】

事案の概要

被告人は複数の者と共謀して、高齢者を電話で騙し、指定するアパートの一室に現金を送らせようとしたが、不審に感じた被害者が警察に通報したため未遂に終わった。

被告人は「受け子」であり、本判決では、被害者を騙す行為が終了した後に犯行に加わったと認定された。

 

裁判所の判断

本件受領行為につき詐欺の故意の有無を判断するに当たり、原判決のいうように、「何らかの違法な行為に関わるという認識」に加えて、「詐欺に関与するものかもしれないとの認識」が存することの立証を要求するのは相当ではない。

なぜならば、本件受領行為のように、特異な状況において荷物を受領する場合、そのような行為態様から通常想定される違法行為の類型には、本件のような特殊詐欺が当然に含まれるというべきであり、したがって、本件受領行為につき「何らかの違法な行為に関わるという認識」さえあれば、特段の事情がない限り、本件のような特殊詐欺につき規範に直面するのに必要十分な事実の認識があったものと解され、同行為が「詐欺に関与するものかもしれないとの認識」があったと評価するのが社会通念に適い相当だからである。

そして、本件において「詐欺に関与するものかもしれないとの認識」を排除するような特段の事情は見当たらない。

 

判例の解説

本判決(福岡高裁)は、詐欺の成立に必要とされる故意の意味について、「特異な状況において荷物を受領する場合」、受領行為について、「何らかの違法な行為に関わるという認識」さえあれば、特段の事情がない限り、詐欺に関与するものかもしれないとの認識があると判断しています。

一審(地裁)では、裁判所は故意が認められるためには、「詐欺に関与するものかもしれないとの認識」を基礎づける事実の立証を求めたのに対し、本判決(高裁)は、特異な状況における受領行為であること自体が「詐欺に関与するものかもしれないとの認識」を基礎づける重要な事実であるとした点に注意が必要です。

このような裁判所の傾向からすると、受け子について、広く共同正犯が認められる可能性があります。

 

 

詐欺の共犯事案のポイント

刑事事件に注力する弁護士を選任し、有利な証拠を豊富に収集し、戦い抜くことが不起訴処分・無罪判決獲得のために重要です。

また、質問者のように故意がある場合でも、当然に詐欺罪の共同正犯となるわけではありません。

共同正犯という評価は、犯罪に意欲的に(自分のために)参加したといえる者についてのみ、認められます。

なんら報酬もなく(もしくはかなりの小額の報酬のみで)、ただただ手助けをするために出し子・受け子となった者は、幇助犯にとどまる場合があります。

幇助犯であれば、刑罰が軽くなりますから、幇助犯と評価すべきケースでは、このことをしっかりと主張する必要があります。

 

 

まとめ

以上、詐欺に関与した場合の犯罪の成否と弁護活動のポイントについて、詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか。

詐欺に関与した場合、共同正犯や幇助犯として処罰される可能性があります。

故意を争う場合や共同正犯の成立を否定する場合、自己の主張を基礎づける証拠の収集し、しっかりと主張していく必要があります。

詐欺罪で逮捕されてしまった方や、ご家族が逮捕されお困りの方は、刑事事件に注力する弁護士が在籍する当事務所に、お気軽にご相談ください。

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