横領で返済できないと処罰される?【弁護士が解説】

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

横領についての質問です。

会社のお金を横領してしまいました。会社からは、明日までに支払わなければ告訴すると言われています。

ですが、返すお金が十分にはありません。どうすればよいですか?

 

 

 

弁護士の回答

会社のお金を横領して返済しない場合、民事上の損害賠償義務が生じるほか、刑事責任を追求されて処罰される可能性があります。

 

横領とは

横領のイメージ画像横領とは、自らが占有している他人の物を、無断であたかも自分の物かのごとく使用したり売却したりすることをいいます。

横領罪は、単純横領罪(5年以下懲役)、業務上横領罪(10年以下懲役)、遺失物等横領罪(1年以下懲役または10万円以下罰金科料)に分かれています。

単純横領罪と業務上横領罪の違いは、「業務」という身分に基づく横領行為か否かにあります。

業務とは、社会生活上の地位に基づいて、反復継続して行われる事務のことをいいます。

遺失物横領罪は、横領の客体が「遺失物、漂流物、その他占有を離れた他人の物」である点で他と異なります。

会社のお金を横領する場合、業務上横領罪が成立する可能性が高いと思われます。

横領についてくわしくはこちらのページをごらんください。

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横領したお金を返済できないとどうなる?

会社はあなたに対して、刑事上の責任追及として告訴を、民事上の請求として不法行為に基づく損害賠償請求ないし不当利得返還請求(訴訟)をすることができます。

会社にとって最も重要なのは、あなたを刑務所に追いやることではなく、あなたに奪われたお金を取り返すことです。

ですから、あなたが横領したお金をしっかり返せるのか、返せることを会社が信用してくれるのかが重要になります。

示談を成立させることができれば、会社は告訴をすることはないでしょうし、告訴を既にしている場合には、取り下げてくれることも多いでしょう。

会社は、明日までに支払わなければ刑事告訴と言っているとのことですが、譲歩を全くしないという姿勢かどうかは、当日面会して話してみなければ分かりません。ですが、会社も全額を当日持ってくるとは思っていないことが多いでしょう。

可能な限りの被害弁償を行った上で、残額についてはこれから働いて毎月定額を支払っていくという形で、交渉を進めましょう。

また、しっかりと反省の意を示すこと、横領に至る経緯を正直に話すことも必要でしょう。

あなたは、会社を退職になる可能性が高いですが、示談の中で、自首退職の形をとってくれないか(場合によっては会社に留めてくれないか)も交渉していきましょう。

懲戒解雇されてしまうと、その記録が残ってしまい、再就職の妨げとなってしまいます。

あなたが再就職できないことはあなたにとっても会社にとってもマイナスですので、理解してくれる会社も多いでしょう。

逮捕されると、勾留もあわせて最大23日間の身体拘束を受けることになり、社会生活上支障が生じることになります。

起訴までの流れの解説

最も望ましいのは、逮捕されぬまま、示談を成立させて事件を解決することです。

横領の弁護活動について、詳しくはこちらをご覧ください。

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横領の時効

横領の時効は、大きく分けて、刑事責任を追求できる期間(公訴時効期間)と民事上の損害賠償請求が可能な期間(消滅時効)の2つがあります。

横領の時効をわかりやすくまとめると、下表のとおりとなります。

罪名 公訴時効期間 民事の不法行為の消滅時効
遺失物等横領罪 3年 損害及び加害者を知ったときから3年
単純横領罪 5年
業務上横領罪 7年

※公訴時効の起算点は、犯罪が終わったときです。

※不法行為に基づく損害賠償請求については、不法行為から20年経過すると損害賠償請求できません(除斥期間)。

 

 

横領したお金が少額の場合

横領したお金が少額の場合でも、会社が警察に被害届を出したり、刑事告訴を行うこと、起訴される可能性があります。

少額であれば、返済可能性が高くなると思われますので、返済の意向を伝えて示談交渉を行う方がよいでしょう。

 

 

分割返済の提案

借金返済横領したお金を返済できない場合、分割返済の提案を行うことがあります。

例えば、100万円を横領した場合、一括での返済が難しいとき、毎月5万円を20回で分割返済する、などの提案です。

もちろん、分割返済に応じてくれるか否かは会社しだいです。

通常は、分割返済よりも、一括返済の方が示談を受け入れてくれる可能性が高い傾向にあります。

また、分割返済の場合、会社の方から連帯保証人などの担保を要求される可能性があります。

 

 

返済後に刑事告訴される可能性

横領したお金を全額返済した場合、民事上の損害賠償義務はなくなります。

しかし、刑事責任は当然に消滅するわけではありません。

すなわち、お金を支払っても、起訴される可能性はゼロではないのです。

このような事態を回避するために、返済する前に、示談書を作成するべきです。

示談書中に、返済を条件に刑事告訴をしない、などと記載しておくことで、このような事態を回避できる可能性が高まると思われます。

ただし、示談書は、専門家に相談の上、適正な内容のものを作成することをお勧めしています。

 

 

横領後の人生

横領で起訴されて有罪判決が出ると、前科がついてしまいます。

また、懲戒解雇されると、再就職に影響が出る可能性もあります。

そうすると、社会復帰が難しくなる場合があります。

したがって、会社との間で誠意を持って話し合い、できれば円満解決を目指すべきです。

 

 

まとめ

以上、横領したお金を返済できない場合に想定される問題点等について解説しましたがいかがだったでしょうか?

横領で刑事責任や懲戒解雇をされると、今後の人生に悪影響を与える可能性があるため、刑事・民事の2つの観点から、弁護活動が重要となります。

当事務所では、あなたに代わって、弁護士が示談交渉を行い、横領に至る経緯、今後の返済プラン、自主退職の形をとってほしいことなどを会社側に丁寧に説明し、示談の成立のために全力を尽くします。

また、併せて、あなたの再就職のために可能な限りの助力をさせていただきます。

横領をしてしまった方、まずは、刑事事件に注力する弁護士が在籍している当事務所へ、お気軽にご連絡ください。

横領の弁護活動について、詳しくはこちらをご覧ください。

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