監護者わいせつ・監護者性交等罪に関する質問
身の回りの世話をしてくれる施設の職員が未成年の入所者と性的な行為をした場合、監護者性交等罪にあたる?
監護者性交等罪について質問があります。
自分は13歳又は14歳の頃、親元を離れて施設から中学へ通っていました。
施設には養護施設同様にスタッフがシフト制で勤務していました。
学校に関することや食事の管理は彼らが行なっていたのですが、当時働いていたスタッフ(28)が宿直のたびに性交を求められていました。
数回に及ぶ行為で、今現在21になりましたが、まれにフラッシュバックをおこします。
このような環境、関係では監護者性交等罪は当てはまるのでしょうか。過去のことなので掘り返すつもりはありませんが、ふと気になりました。
弁護士の回答
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1 監護者性交等罪について
まず、監護者性交等罪(刑法179条2項)は、現に監護する者がその影響力に乗じて性的な行為に及んだ場合に成立する犯罪です。
未成年者に対する指導状況や身の回りの世話等の生活状況、生活費の支出等の経済状況、未成年者に対する諸手続きを行う状況といった要素によっては、児童養護施設の職員も「現に監護する者」に該当する可能性があります。
監護者わいせつ・監護者性行等罪について、詳しくはこちらをご覧ください。
そのため、現在、その職員によって未成年者に対してあなたに行われたのと同様の行為が行われているのであれば、監護者性交等罪が成立する可能性はあるでしょう。
しかしながら、監護者性交等罪は、平成29年の刑法改正によって新設された犯罪です。
憲法39条前段にも定められているように、犯罪であると法律で決められる前の行為については、刑事処罰の対象とは出来ないということになっています(遡及処罰の禁止といいます。)。
ご質問の件は、7・8年前の出来事のようですので、監護者性交等罪ができる前の出来事になります。
そのため、残念ながらご質問の件について、監護者性交等罪が成立することはありません。
以下では、ご質問の件について他に何か犯罪が成立しうるのかという点についてもお答えします。
2 成立しうる犯罪について
あなたが13歳もしくは14歳のときに養護施設の職員から性交を求められていたということですが、相手方の反抗を著しく困難にする程度の暴行脅迫を用いて行われていた場合、当時の罪名でいうと強姦罪(刑法177条)が成立します。
強姦罪について詳しくはこちらをご覧ください。
このような場合であれば、公訴時効も成立していませんので、今からであっても刑事事件化することは可能です。
ただし、かなり前の事件ですので、証拠が残存していないことが十分考えられます。
そうすると、結局相手方が有罪であるとは証明できない可能性も相当あるかと思います。
また、暴行や脅迫がなかったという場合であっても、18歳未満の児童と性交等を行うこと自体が児童福祉法違反や各都道府県で定められている青少年健全育成条例違反になり得ます。
しかしながら、これらの犯罪の公訴時効は、それぞれ7年・3年とされており(刑事訴訟法250条2項4号・6号)、ご質問の件が7・8年前の出来事であることからすると、既に公訴時効が成立していると思われますので、今から刑事事件として捜査を進めてもらうことは出来ません。