勾留とは?勾留が認められる場合と、対処方法について、刑事弁護士が解説

  
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

勾留とは

逮捕勾留とは、被疑者ないし被告人の身柄を拘束する手続です。

勾留には、起訴前(被疑者を対象)の勾留と、起訴後の勾留(被告人を対象)の勾留があります。

前者が捜査段階のものであるのに対し、後者が公判段階のものであることから、両者には、手続、期間、保釈の可否等について制度上の差異が設けられています。

ここでは、被疑者の勾留について解説します。

勾留の要件

勾留は、被疑者の身体の自由を奪う手続です。簡単にできるとなると、人権侵害にもつながるため、法律に定められた要件を満たすことが必要となります。

勾留の要件は、被疑者が「罪を犯したと疑うに足りる相当な理由」がある場合で、かつ、次の各号のいずれかに該当することです(刑訴法207条1項、同60条1項)。

ポイント① 被疑者が定まった住居を有しないとき。
② 被疑者が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
③ 被疑者が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

※ただし、30万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、2万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる事件については、被疑者が定まった住居を有しない場合に限って勾留できます(刑訴法60条3項)。

罪を犯したと疑うに足りる相当な理由とは

「罪を犯したと疑うに足りる相当な理由」とは、一応犯罪の嫌疑が肯認できる程度の理由をいうと解されています。

 

住居不定とは

「定まった住居を有しない」とは、捜査機関にとって、被疑者に定まった住居があることが確認できない場合をいいます。

具体的には以下の場合、この要件を満たすと考えられます。

・被疑者が住居を黙秘し、住居が判明しない
・被疑者が住居について嘘をついた
・被疑者が逮捕されたため勤務先を解雇され、これまでどおり勤務先の寮に住めなくなった

 

罪証隠滅のおそれ

「罪証」とは、勾留の理由である被疑事実についての証拠をいいます。証拠とは、犯罪の成否に関するものだけではなく、情状に関するものを含み、人証、物証を問わないと解されています。

「隠滅」とは、有ったことを無いようにし、無かったことを有るようにするなど真実が明らかになることを妨げる一切の行為をいいます。良し悪しはともかくとして、実務上、以下の様な場合、罪証隠滅のおそれが肯定される傾向にあります。

・犯人の数が多い場合(特に組織的犯罪の場合)
・決め手となる客観的証拠がない場合
・被疑者が被害者や目撃者などとの関係が深い場合
・捜査機関が確保している証拠が少ない場合
・罪が重い場合
・被疑者が罪を認めていない場合

 

逃亡のおそれ

「逃亡」とは、被疑者の所在が不明になり、あるいは被疑者が捜査権の及ばない地域に行くことをいいます。

 

 

勾留の流れ

勾留は以下の流れで実施されます。

①検察官の請求

検察庁勾留請求権を有するのは検察官だけです(刑訴法207条1項)。

勾留請求は、被疑者が逮捕されている段階でなければなりません(逮捕前置主義といいます。)。

矢印

②裁判官の勾留状の発布

記録や証拠勾留請求されると、裁判官は、被疑者に対して勾留の理由とされている被疑事実を告げ、これに対する意見・弁解を聴取し、陳述調書を作成します(刑訴法61条)。

そして、裁判官が勾留請求を却下しない限り勾留状が発布されます。

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③検察事務官又は司法警察職員の勾留の執行

逮捕、勾留

 

 

勾留のデメリット

勾留が認められると、勾留請求した日から、原則10日間、身柄が拘束されます(刑訴法208条1項)。

もっとも、検察官の請求によって、勾留期間を延長できます。

延長は、基本的には10日を超えてはなりません(内乱等特殊な犯罪についてはさらに5日以内の延長が認められます。)。

すなわち、勾留が認められると、ほとんどの犯罪では、最大20日間、身柄が拘束されます。

そして、この期間内に、検察官によって、公訴が提起される可能性があります。

起訴までの流れの解説

公訴が提起されると、ほとんどのケースは有罪となります。

日本の刑事裁判は、精密司法といわれており、有罪の確立が99.9%となっているからです。

このように、刑事事件では勾留されると、有罪になってしまうことが多い点に注意しなければなりません。

また、身柄を拘束されることによって、甚大な精神的苦痛を感じるでしょう。社会的な信用も失墜し、職を失う可能性も高いです。ご家族の心配も計り知れません。

 

 

勾留の取り消しはできる?

刑事訴訟法は、勾留について、「勾留の理由又は勾留の必要がなくなったときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消さなければならない」と規定しています(87条1項)。

条文を見ると、勾留の取り消しを求めることができる者は、多数に見えますが、実務上、重要なのは弁護士による勾留取消請求です。

被疑者本人やその家族等からの勾留取消は、説得力が欠けるので、取消までいくことは困難と思われます。

また、勾留を請求した検察官が自ら勾留を取り消すのは、よほどのことがないと考えにくいです。

弁護士は、法律の専門家です。特に刑事弁護に精通した弁護士による勾留取消請求は、裁判所に対する説得力が期待できます。

 

 

勾留理由の開示とは?

日本国憲法第34条は、「何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない」と規定しています。

この規定を受けて、刑事訴訟法は、勾留理由開示の制度を規定しています(82条〜86条)。

勾留理由の開示請求権者

勾留されている者のほか、その弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹その他利害関係人が開示請求権者です。

勾留理由開示の要件

勾留によって現に拘禁されていることが要件です。

したがって、勾留されても、保釈、勾留の執行停止若しくは勾留の取消があったとき、又は勾留状の効力が消滅したときは、勾留理由の開示請求は効力を失います(刑訴法82条3項)。

勾留理由の開示は、同一勾留については1回限りとなります。

勾留理由開示の手続の流れ

勾留の理由の開示は、公開の法廷で実施されます。また、法廷には、裁判官及び裁判所書記が列席します(刑訴法83条)。勾留理由の開示は、被疑者とその弁護人の出頭が原則として必要です。

法廷においては、裁判長は、勾留の理由を告げなければなりません(刑訴法84条)。

勾留理由の開示について、検察官、被疑者、その弁護人等は、原則、意見を述べることができます。

勾留理由の開示によって、直接勾留が取り消されるわけではありません。

しかし、勾留理由の開示によって、勾留理由が不適法であったり、勾留の理由及び必要がないことが判明すれば、勾留の取消が行われることになります。

 

勾留取り消しのポイント

上記を踏まえて、勾留を取り消すためのポイントについて、解説いたします。

反省文、誓約書等の作成

勾留は、上記のとおり、住居不定、罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれなどの要件を満たしたときに実施され、その要件に該当しなくなったときに取り消しが可能です。

犯罪の種類や軽重にもよりますが、被疑者が罪を認めていなかったり、不誠実な対応を取っているに逮捕や勾留がされる傾向にあります。

そのため、このような場合は、本人が罪を認めて、真摯に反省していることを示す書面(反省文)を捜査機関に提出することが考えられます。

また、勾留が取り消され場合、逃亡せずに捜査機関の呼び出しにすぐに応じるなどの誓約書も効果的だと思います。

被疑者のご家族については、身元引受人として、本人を監督指導していくことをの誓約書などを提出することもあります。

 

示談書の提出

書類被害者がいる犯罪の場合、示談の成否が勾留取り消しに大きな影響を及ぼす可能性があります。

示談が成立して、一定の金銭が支払われ、被害者自身が被疑者の処罰を望んでいなければ、勾留を継続する必要性が低くなるからです。

そのため、性犯罪、財産犯、粗暴犯など、被害者がいる犯罪では、示談交渉を迅速に実施し、示談書を提出することが有効だと思われます。

示談について、くわしくはこちらをごらんください。

 

弁護士接見の活用

弁護士本人がすでに勾留されている場合、外部との接触が難しくなり、情報が全く伝わってきません。

このような場合、本人と面会して状況を確認することが重要です。そのために、接見という手段があります。

もっとも、弁護士以外のご家族等の接見は、時間や人数が大幅に制限されています。

また、接見の際に警察官が立会い、会話内容が録取されているため話しにくいという問題があります。

さらに、捜査機関によって「接見禁止」の措置が取られていると、弁護士以外の方は接見できません。

そのため、弁護士に接見を依頼することを検討されてもよいでしょう。

接見について、くわしくはこちらをごらんください。

 

勾留への対処法

逮捕・勾留前の対処法

勾留はその要件を満たした場合に行われます。筆者の主観ではありますが、軽い犯罪の場合に勾留されるのは、「被疑者が罪を認めていない」場合に多い傾向です。

重大犯罪の場合は罪を認めていても、勾留される可能性があります。

罪を認めていないと、罪証隠滅や逃亡のおそれがあると判断され、逮捕・勾留されてしまうのだと考えられます。

このような捜査は、冤罪の発生を増加させる危険があるため、極めて問題です。

しかし、そのような実情がある以上、これを踏まえて対処しなければなりません。

したがって、もし、罪を犯してしまったのであれば、反省し、罪を認めるというのが勾留を回避するための対処法となり得ます。

もちろん、無実であれば、断固として戦うべきであり、罪を認めるべきではありません。

無罪を主張すると、捜査機関から過酷の取調べが行われる可能性があります。

しかし、その場合、他に有罪を立証できる証拠もないはずなので、起訴される可能性は低いと思われます。

 

逮捕・勾留後の対処法

本人が逮捕・勾留中の場合、ご家族やご友人の支えが必要です。

本人は、捜査によって、心身ともに疲れ果て、戦う気力を無くしているかもしれません。

本人を元気づけるために、ご家族等が留置場等へ行き、本人と面談すること(「接見」といいます。) は効果的だと考えられます。

また、今後の弁護方針を考えるためにも、早期の初回接見は重要です。

まずは本人と面談して、状況を確認するためにも接見は効果的です。

ただし、弁護士以外の方の接見は、逮捕から勾留決定までは大幅に制限されていますので、注意してください。

 

 


なぜ弁護士選びが重要なのか

逮捕・拘留についてよくある相談Q&A