逮捕されたくありません、どうすればいいですか?
逮捕とは
逮捕とは、被疑者の身体を拘束して一定の場所に引致し、一定期間留置することをいいます。
逮捕は、人の行動の自由を奪う強制処分です。また、逮捕は、人に対して精神的苦痛を与え、社会的信用を失墜させ、経済的損失等の打撃をも与えます。
そのため、逮捕には、法律で定めた要件が必要です。
すなわち、人を逮捕するには、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」と「逮捕の必要性」がなければなりません(刑訴法199条2項)。
被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
犯罪の嫌疑自体又はその嫌疑があるといえる理由を「逮捕の理由」といいます。
逮捕の必要性
逮捕なくしては、十分な捜査ができないことが要件となります。
刑事訴訟法には、詳細な規定はありませんが、法文にあるものとして、以下の場合があります(刑訴法199条1項但書、60条)。
・罪証隠滅のおそれ
・逃亡のおそれ
上記の「おそれ」の有無については、被疑者の年齢、境遇、犯罪の軽重・態様その他の事情に照らして判断されます(刑訴規則143条の3)。
逮捕の種類
逮捕には、通常逮捕、緊急逮捕、現行犯逮捕の3種類があります。
通常逮捕は、逮捕前に、裁判官が発した逮捕状が必要となります。
前記の逮捕の要件について、仮に捜査機関のみで判断するとなると、逮捕の必要性がないのに逮捕するなどの人権侵害の可能性があります。そこで、逮捕の要件を満たすか、裁判官に判断させることにしているのです。
緊急逮捕は、事前の逮捕状は不要ですが、一定の重大な犯罪に限定されています。また、事後的に逮捕状が必要となります。
現行犯逮捕については、犯人であることが明白であるため逮捕状は不要となります。
3つの逮捕の要件等をまとめたものを下表で示しています。
通常逮捕 |
緊急逮捕 |
現行犯逮捕 |
|
要件 |
被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある(注1) | 死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由(注2)がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないとき | 被疑者が現行犯人であること(注3、注4) |
注意点 |
逮捕の際、原則として逮捕状を示す。
検察事務官又は司法巡査が逮捕状により被疑者を逮捕したときは、直ちに、検察事務官はこれを検察官に、司法巡査はこれを司法警察員に引致しなければならない。 |
逮捕の際、逮捕の理由と緊急逮捕であることを告げなければならない。
逮捕後、直ちに、逮捕状を求める手続が必要。 |
何人でも逮捕状なく逮捕できる。
検察官、検察事務官及び司法警察職員以外の者は、現行犯人を逮捕したときは、直ちにこれを地方検察庁若しくは区検察庁の検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならない。 |
注1 30万円以下の罰金(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円以下の罰金)、拘留又は科料に当たる罪の場合:住居不定又は正当な理由なく出頭の求めに応じない場合に限る。
注2 充分な理由とは、通常逮捕の「相当な理由」よりも嫌疑の程度が濃厚であることをいいます。
注3 30万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪の現行犯については、犯人の住居若しくは氏名が明らかでない場合又は犯人が逃亡するおそれがある場合に限る。
注4 以下の場合は現行犯人とみなされます(準現行犯人)。
2 贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。
3 身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。
4 誰何されて逃走しようとするとき。
逮捕の注意点
通常、逮捕されると、48時間以内に検察官に身柄を装置されます。
また、検察官は、それから24時間以内に勾留を請求します。
勾留を請求されると、通常の犯罪の場合、10日(さらに延長されると合計20日)身柄が拘束され、公訴が提起されます。起訴されてしまうと、99.9%が有罪となると言われています。また、もし無罪を争うとなると、通常は身柄を拘束されたまま審理が進み、釈放も難しい場合が多いです。
このように、刑事事件では逮捕されると、有罪になってしまうことが多い点に注意しなければなりません。また、身柄を拘束されることによって、甚大な精神的苦痛を感じるでしょう。また、社会的な信用も失墜し、職を失う可能性も高いです。ご家族の心配も計り知れません。

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士
所属 / 福岡県弁護士会・九州北部税理士会
保有資格 / 弁護士・税理士・MBA
実績紹介 / 刑事事件の相談件数年間200件超え(2019年実績)を誇るデイライ
ト法律事務所の代表弁護士。法律問題に関して、弁護士や市民向けのセミナー講
師としても活動。KBCアサデス、RKB今日感テレビ等多数のメディアにおいて法
律問題についての取材実績がある。「弁護士プロフェッショナル」等の書籍を執
筆。
