夫や妻の車にGPSを付けるのは犯罪?【弁護士が解説】

執筆者
弁護士 宮崎晃

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士

所属 / 福岡県弁護士会・九州北部税理士会 

保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

GPS取り付けについての質問です

夫が浮気をしているのではないかと疑い、夫が普段から使用している自家用車にGPSを取り付けました。

夫にGPSが発見され、警察に通報されてしまいました。

警察からGPSを取りに来るように呼び出されていますが、私には何らかの犯罪が成立しているのでしょうか?

 

 

 

弁護士の回答

状況しだいでは器物損壊罪等が成立する可能性があります。

 

プライバシー侵害について

このようなケースにおいて、まず考えられるのはプライバシーを侵害しているのではないか、ということです。

プライバシー侵害行為とは、プライバシー情報を他者にみだりに公開されない権利(プライバシー権)を侵害する行為のことをいいます。

GPSを取り付ける行為は、取り付けられた者の居場所を把握し、どこで何をしているかの推測を可能としてします。

そのため、勝手にGPSをつけられた側としては、自分のプライバシーを傷つけられているような気持ちになるため、刑事告訴したいなどと考えることもあるでしょう。

しかし、プライバシー侵害は、それだけでは犯罪は成立しません。

すなわち、プライバシー侵害は、民事上の責任(不法行為に基づく慰謝料請求)が発生する可能性はありますが、刑事上の処罰はありません。

なお、民事上の損害賠償請求についても、可能性はゼロではありませんが、このような状況では基本的に請求は難しいと思われます。

 

 

器物損壊罪について

GPSを車に取り付ける場合、その車が被害者の所有物であれば、器物損壊罪が成立する可能性があります。

器物損壊とは

器物損壊とは、他人の所有物を壊す、もしくは使えない状態にすることをいいます。

他人の車の窓ガラスを割る、などが典型例です。

車にGPSをつける場合は、取り付ける際や取り外す際に、車に傷を付けたような場合に器物損壊罪が成立する可能性が考えられます。

もっとも、この事例において、相談者様は、配偶者の浮気を疑い、配偶者が利用する自家用車にGPSを取り付けたとのことです。

その自家用車が、相談者様の所有物であるならば、器物損壊罪は成立しません。

器物損壊罪は、「他人の物」を損壊した場合に成立する犯罪だからです。

器物損壊罪

刑罰

法定刑は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料となっています。

根拠条文

刑法第261条
他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。

刑法第204条
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

器物損壊について、くわしくはこちらをごらんください。

 

 

住居侵入罪について

GPSを取り付けるために被害者の住居に無断で立ち入ったのであれば、住居侵入罪が成立する可能性があります。

住居侵入罪とは、正当な理由がないのに、人の住居もしくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から待機しなかった者」について、成立する犯罪を言います。

「正当な理由」とは、居住者の同意がある場合や、刑事事件の適法な捜査等のためである場合が挙げられます。

法定刑は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金となっています(刑法第130条)。

住居侵入について、くわしくはこちらをごらんください。

この事例では、配偶者と同居している「我が家」であれば、住居侵入罪は成立しません。

しかし、別居後に配偶者の自宅に無断で立ち入ったような状況であれば、住居侵入罪が成立する可能性があります。

 

 

離婚・男女問題

両親ご相談の事例では、犯罪の問題だけではなく、離婚や不貞行為の慰謝料が問題となる可能性が高いと思われます。

すなわち、配偶者が不倫している場合、離婚原因(法律上離婚が認められること)となったり、当該配偶者や不倫相手に慰謝料を請求できる可能性があります。

 

 

まとめ弁護士以上、配偶者の車にGPSをつけた場合の問題点について、詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか。

GPSを勝手に取り付けた場合、プライバシー侵害として、民事上の損害賠償請求をされる可能性があります。

また、車を傷つけた場合は器物損壊罪、別居後であれば住居侵入罪が成立する可能性があります。

そのため、ご心配であれば、刑事事件に精通した弁護士にご相談されることをおすすめします。

また、離婚問題等の家事事件に発展しそうな場合は、離婚問題に強い弁護士にも相談されたほうが良いでしょう。

当事務所には、刑事事件に注力する弁護士や離婚事件に注力した弁護士が複数在籍しており、刑事事件や離婚問題のサポートが可能です。

お困りの方は、まずはお気軽に、当事務所までご連絡ください。

ご相談の流れはこちらをご覧ください。

 

 

執筆者
弁護士 宮崎晃

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士

所属 / 福岡県弁護士会・九州北部税理士会 

保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

実績紹介 / 刑事事件の相談件数年間200件超え(2019年実績)を誇るデイライ

ト法律事務所の代表弁護士。法律問題に関して、弁護士や市民向けのセミナー講

師としても活動。KBCアサデス、RKB今日感テレビ等多数のメディアにおいて法

律問題についての取材実績がある。「弁護士プロフェッショナル」等の書籍を執

筆。

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