執行猶予期間中に再犯、起訴。求刑を短縮することに成功した事例

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

罪名 傷害罪
解決までの期間 5ヶ月
弁護活動の結果 求刑から4ヶ月の減刑

事例人物

Oさん(30代)

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

交際相手の浮気で喧嘩をし傷害事件を起こしてしまったOさん

暴行Oさんは、アルバイトをしながら、交際相手と同棲をしていました。

Oさんは、交際相手が浮気をしたことに立腹し、交際相手の腹部を殴打する傷害事件を起こしてしまいました。

その後も1ヶ月同棲は続きましたが、喧嘩が続いたこともあり、交際関係・同棲関係は解消されるにいたりました。

その後、相手方の両親が殴打事件を知り警察に通報、本人も被害届を提出し、Oさんは逮捕されました。

Oさんは、逮捕される直前に私たちのところに相談に来ていたこともあり、刑事弁護人として、弁護活動を開始しました。

 

弁護活動により求刑から大幅な減刑を獲得

まずは、被害女性に連絡を取り、示談交渉を呼びかけました。

脅える女の子被害女性は、「逮捕されるとは思わなかった、自分としては大事にしたくない」として示談に応じる姿勢を示しましたが、その女性は、18歳でした。

民法上、ただ単に利益を受ける贈与のような場合を除くと、未成年者には一人で契約を成立させる能力が認められていません。

一般に示談をする際には、ただ金銭を受け取るだけではなく、刑事処罰を求めない意思表示をする条項や、他に当事者間の債権債務が存在しないことを確認する条項があります。

このような条項が入った合意を未成年者が単独で行うことは出来ませんから、法定代理人である親権者の同意を得たうえで示談をしなければなりません。

未成年者との示談について、詳しくはこちらをごらんください。

そのため、女性の両親を説得し、示談を成立させる必要がありました。

両親は、示談を頑なに拒絶し、結果的に起訴されるにいたりました。

しかしながら、被害女性本人は処罰感情を有していないことから、私たちは、その女性と面会をし、被害届の取下げ書・重い処罰を求めない旨の上申書を作成してもらい、裁判所に証拠として提出しました。

検察側は、被害女性の処罰感情について争い、弁護人提出書証を「不同意」としたため、被害女性の証人尋問が行われることになりました。

検察側は女性と打ち合わせをして尋問に臨んだようではありましたが、結局、女性は正直に、処罰感情がない旨を述べるに至り、裁判所もそのことを前提とした判決を出すことになりました。

その結果、執行猶予はつかなかったものの、求刑から4月減刑された判決となり、大幅に刑期を短縮することができました。

 

 

今回のポイント

刑事弁護士Oさんは、同種前科をもっており、しかも今回の事件は執行猶予期間中に起こしたものでした。

執行猶予期間中に再犯をした場合に、再度の執行猶予が認められるためには、①裁判時に執行猶予中の者であること、②1年以下の懲役または禁錮の判決が言い渡されるものであること、③特に酌量するべき事情が存在すること、④保護観察に付されていなかったこと、という厳しい条件を全て満たす必要があるとされています。

③で求められている事情は、通常の執行猶予に求められる事情だけでなく、そこから更に踏み込んだものである必要があるでしょう。

また、条件全てを満たしたとしても、裁判官の裁量次第で再度の執行猶予が認められないこともあり得ますから、再度の執行猶予を得るためのハードルは非常に高いものとなっています。

執行猶予については、こちらをごらんください。

再度の執行猶予については、こちらをご覧ください。

 

刑法第25条1項

前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
or
前に禁固以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年間以内に禁固以上の刑に処せられたことがない者

刑法第25条2項

裁判時に全部執行猶予中

1年以下の懲役または禁錮の判決となるもの

情状に特に酌量すべきものがあること

保護観察に付されていないこと

今回の事件は被害者が刑事処罰を望んでいないという事情があったとしても、同種の再犯であったということや、故意の犯行であったということを踏まえると、それだけで再度の執行猶予を得ることは不可能に近いケースではありました。

わずかな可能性にかけて弁護活動を行い、結果としては残念ながら再度の執行猶予はつかず、実刑判決となりました。

ただ、執行猶予期間中の再犯は、悪質性や規範意識の低さを指摘され、一層重い量刑となることもあることからすると、求刑からの大幅な減刑は十分な成果といえます。

再度の執行猶予を得るという目標に向けて最善の弁護活動を行ったことが減刑のポイントとなったといえます。

また、Oさんは、接見や面会を繰り返す中で、感情の高まりによってすぐに暴行に及んでしまう自分の問題点に気付くことができました。

社会に復帰した後は、何らかの形で治療をしていくことを約束しており、二度と同様の事件を起こさないように更生に向けて歩みだそうとしています。

当事務所では、目の前の刑事処分を考えるだけではなく、その先の人生における更生のきっかけになればと思い、日々の活動を行っています。

傷害事件で警察から捜査を受けている方やそのご家族、そして、少しでも刑を軽減したいとお考えの方は刑事事件に注力する弁護士が在籍する当事務所に、まずはお気軽にお越しください。

 

 


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