偽計業務妨害、威力業務妨害に関する質問

新型コロナでの政府の対応についてのSNSに、軽率なコメントをした。偽計業務妨害になる?

マスク1枚200円 全戸配布で菅官房長官「スピード感重視」 新型コロナ

菅義偉官房長官は2日の記者会見で、安倍晋三首相が全世帯に配布すると表明した布マスクについて「1枚200円程度と聞いている」と明らかにし、「補正予算(編成)に向けて関係省庁で精査する」と述べた。

国が買い上げたマスクは、日本郵政が把握している各住所のポストへ2枚ずつ投函(とうかん)されると説明。

「店頭にマスクがないという声が多いので、必要な対策をスピード感を持って行うべきだと判断した」と強調した。

上記のSNSのスレッドに対して「安倍さんからマスク2つ届いたわ代引きで800円でした」と書き込みをしてしまったのですが偽計業務妨害の罪に該当するのでしょうか?

弁護士回答

そのような書き込みであれば、偽計業務妨害罪(刑法233条)が成立する余地はないと考えられます。

業務妨害罪が成立する前提として、業務が「妨害」されることが必要です。

この場合の「妨害」とは、現に業務妨害の結果が発生したという事実が存在する必要はなく、業務を妨害するに足りる行為があることをもって足りると解されています。

ですが、SNSのスレッド上で、マスク2つが届いた際に代引きで800円を徴収されたという趣旨の書き込みを行ったところで、誰かの業務が妨害される可能性は皆無といって良いでしょう。

とはいえ、軽率な書き込みがエスカレートしすぎないよう、十分注意なさってください。

 

 

ヤクザか暴力団ではないかと思われる様な口調で暴言を吐かれた

某ビルの設備管理を担当している者です。又、同ビルの清掃管理は下請会社に発注しています。

ある日、トイレが詰り便器の汚水が床に溢れました。

原因は排水管の詰りであり、詰まっているにも関わらず洗浄水を流し続けた為、汚水が溢れ出たものです。

床の汚水処理は清掃担当ですが、詰りの除去は設備担当です。

詰りはラバーカップと言う道具を使って除去します。詰まった便器は洗浄水を止めた為、再び汚水が便器から溢れ出る様な事はありません。

清掃が済んだ為、床の汚水はなくなりましたが、ラバーカップを便器の中に入れ、詰り除去の為の操作を行なうと、便器一杯に溜まっている汚水が溢れ出る事は容易に理解出来ました。

汚水が溢れると、清掃担当から「せっかく奇麗にしたのに」等とのクレームを受けると思い、「詰り除去の作業をすると汚水が溢れる。溢れた汚水は私が処理するので、汚水処理で使った道具を置いて行って下さい」と言ったところ、清掃担当の責任者は顔を真っ赤にした鬼の形相で、そして、まるでヤクザか暴力団ではないかと思われる様な口調で、「あんたの仕事を手伝っているのに礼の一つも言えねーのか」と、思ってもみなかった回答であり、暴言を吐かれる等とは全く思いませんでした。

結果、これまで築いて来た名声や信用等は、一瞬にして吹き飛んだと思いました。

尚、清掃担当は責任者の他に、部下二人が遣り取りを聞いていましたので、威力業務妨害罪、名誉棄損罪、信用及び業務妨害罪、その他の罪が問えるのではと思った次第です。

「何れの罪になるものか」につきまして、ご指導を頂けると有り難いです。宜しくお願い致します。

追伸

自宅に居る事が殆どございません他、携帯も不所持です。その為、メールでのご回答をお願い出来れば、幸いでございます。

弁護士回答

突然先方から叱責を受けたとのこと、驚かれたことと推察いたします。以下、相談者様が気にされている罪名につき、順に回答いたします。

①威力業務妨害罪(刑法234条)につきまして

相談者様のお話を前提とする限り、相手方の発言のみでは、威力により業務を妨害されたとは評価できず、威力業務妨害罪は成立しない可能性が高いでしょう。

同罪の成立には、現実に業務が妨害されたという結果が生じたことまでは必要とはされておらず、妨害するに足りる行為が行われればよいとされていますが(大判昭和11年5月7日)、相談者様が受けた発言の程度では、業務を妨害するに足りるほどのものであるとまでは言えないと判断される可能性は高いと考えられます。

また、犯罪の成立には、犯罪行為を行った者に故意があったこと(犯罪結果の認識・認容)が必要とされます。

今回で言えば、相手方が相談者様の業務を妨害しようとしてそのような発言を行ったか、少なくとも業務が妨害される恐れがあると認識しつつそのような発言を行ったといえなければなりません。

今回のケースですと、そもそも、相談者様がおっしゃるような会話の流れで、相手方が相談者の業務を妨害しようとしていたのかどうかも不明と言わざるを得ませんので、業務妨害に関する故意があったと判断される可能性は決して高くはないでしょう。

そのため、威力業務妨害罪が成立する見込みは低いといえます。

②名誉毀損罪(刑法230条1項)につきまして

また、名誉毀損罪の成否につきましては、結論から申し上げますと、相談者様の名誉が毀損されたとも評価し難く、同罪が成立する見込みも低いといえます。

部下二人の前で「礼の一つも言えないのか」という趣旨の叱責を受けたということで、これにより恥をかいた、名誉を毀損されたとお考えかもしれません。

しかし、部下の前で叱責されるということは、通常の企業ではさほど珍しいことではないと思われますし、このことで相談者様の名誉が害されると判断される可能性は低いでしょう。

そのため、名誉毀損罪が成立する可能性も低いと考えます。

③信用毀損罪(刑法233条前段)につきまして

信用毀損罪において保護される「信用」とは、経済的な側面における人や物に対する社会的評価であって、例えば人の支払能力又は支払意思に関する信用を毀損した場合に問題となるものです。

今回の相談者様のお話ですと、相談者様は相手方の上記発言により、相談者様ご自身の業務における信用を失ったとお考えかもしれません。

しかし、信用毀損罪が成立するのは、「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用い」た場合に限られます。

虚偽の風説の流布とは、真実に反する内容の噂などを不特定又は多数の人に伝えることをいいます。

偽計とは、人を欺き、誘惑し、あるいは人の錯誤又は不知を利用することを指します。

今回の相手方の発言は、おそらく何らの虚偽を含むものでもなく、また嘘をついたりするような趣旨のものでもないと考えられますので、信用毀損罪の成立要件を満たさない可能性が高いといえます。

そのため、同罪も成立しないと考えられます。

④その他の犯罪の成否につきまして

その他、相手方の発言が、相談者様に対し強い言葉をかけて脅したものであるとして脅迫罪(刑法222条1項)が成立すると解釈したり、礼を無理矢理言わせようとしたりしたことを捉えて強要未遂罪(刑法223条3項、1項)が成立すると考える余地もあるかもしれません。

ですが、これらの罪が成立するには、相手方が「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加えることを告知して脅迫」したことが必要になります。

相談者様のお話を前提としますと、相手方が立腹して強い言葉を使ったということは理解できますが、相談者様に対し何らかの害を加えることを告知するような文言があったとはいえないと考えられます。

そのため、これらの罪についても成立の可能性は乏しいと言わざるを得ません。

⑤まとめ

以上のとおり、残念ながら今回の事案において先方に何らかの罪が成立する可能性は低いと考えられます。

どういった経緯で先方がそこまで怒りを露わにしたのかが分からない以上、対策を立てようがないところもあるかとは存じますが、気持ちを切り替え、そういう方もいらっしゃると割り切って、接触の機会を減らしつつ業務に集中された方が良いかもしれません。

 

 


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