喧嘩で人を殴った。捕まらない?【弁護士が解説】

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

今後の対応しだいでは逮捕されたり、起訴される可能性があります。

 

成立する罪

暴行罪か、傷害罪が成立する可能性があります。

暴行罪と傷害罪は、暴行によって人の身体を傷害させるに至ったかどうかで区別されています。

傷害させるに至らなければ暴行罪、傷害させるに至れば傷害罪となります。

 

刑罰

暴行罪の場合

法定刑が2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料※

傷害罪の場合

法定刑が5年以下の懲役又は50万円以下の罰金

※拘留とは、1日以上30日未満」の間、刑事施設に収監する刑罰です。科料とは、1000円以上1万円未満の財産刑です。

したがって、暴行罪の方が刑が重いといえます。

根拠条文
(傷害)
第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(暴行)
第二百八条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

引用元:刑法|電子政府の総合窓口

ご質問の事案では、相手が怪我をしていないとのことなので、基本的には暴行罪に該当すると考えられます。

しかし、見た目では怪我がなくても、身体の生理的機能に障害を生じさせていれば、傷害罪の可能性もあります。

 

 

逮捕されるケースとは

人を逮捕するには、「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」と「逮捕の必要性」がなければなりません(刑訴法199条2項)。

「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」とは、わかりやすく言えば、かなり怪しいという場合です。

暴行の被害者があなたから殴られたとして被害届を出していれば、この要件を満たす可能性があります。

「逮捕の必要性」については、判断基準が法令に示されています。

具体的には以下の場合です。

 

逮捕される場合

  • 逃亡するおそれがある
  • 罪証を隠滅するおそれがある
  • 一定の軽い罪の場合※
    被疑者が定まった住居を有しない場合又は正当な理由がなく出頭の求めに応じない場合

※三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪

根拠条文

第百九十九条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。ただし、三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まつた住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。
② 裁判官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官又は司法警察員(警察官たる司法警察員については、国家公安委員会又は都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限る。以下本条において同じ。)の請求により、前項の逮捕状を発する。但し、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない。

引用元:刑事訴訟法|電子政府の総合窓口

(明らかに逮捕の必要がない場合)
第百四十三条の三 逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認める場合においても、被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない。

引用元:刑事訴訟法規則|裁判所

 

 

捕まらない方法とは

刑事事件では、時折、捕まらない方法について質問を受けることがあります。

これについては、上記の逮捕の要件を満たさないようにするしかありません。

すなわち、警察官や検察官の呼び出しを無視したりすると、逮捕の要件を満たすことになるため、誠実に対応する必要があります。

また、被害者に連絡をとって、被害届を取り下げるよう強制したりすると、罪証隠滅のおそれがあると判断されると思われます。

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起訴される可能性

令和5年版の犯罪白書によりますと、暴行罪の起訴率は30.4パーセント、起訴猶予率は69.6%です。

傷害罪の起訴率は38.1%、起訴猶予率は、61.9%となっています。

暴行罪の起訴率と起訴猶予率

暴行罪の起訴率と起訴猶予率

傷害罪の起訴率と起訴猶予率

傷害罪の起訴率と起訴猶予率

引用元:令和5年版犯罪白書

起訴猶予率というのは、起訴すれば有罪となる見込みではあるけれども、検察官の裁量で不起訴とした割合のことをいいます。

この情報から分かるように、傷害を負わせるにいたらなかったケースは、傷害を負わせたケースと比べて起訴される割合が1割ほど低いといえます。

ですが、傷害を負わせていなくても、3割の人は起訴されているということも事実です。

 

 

起訴されるかはどうやって決まる?

起訴されるかどうかは、様々な事情を総合考慮して決せられます。

刑事訴訟法第248条は、「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。」としています。

これは起訴便宜主義と呼ばれています。

特に重要なのは、①犯罪の軽重、②情状、③犯罪後の情況であると考えられます。

部下が口答えして指示に従わなかったために暴行に及んだという事情は、「②情状」に関連するでしょう。

ですが、口答えをして指示に従わなかったら暴行に及んでいいのかといえば、及んでよいとはなりませんし、暴行に及ぶ人がどれほどいるのかというと疑問がありますから、あまり有利な事情としては期待できないかもしれません。

 

 

不起訴処分を獲得するには?

そこで、顔面を殴ったというその態様について細かく分析し、傷害を負うことになるおそれがほとんどない程度の力の弱い暴行であったことなどを主張する必要があります。

例えば、平手であるとか、聞き手の逆であるとか、振りかぶっていないであるとか、被害者の方が体格が大きいことであるとか、事案に応じていろいろな主張が考えられます。

主張と同時に、その主張を支える証拠を豊富に収集する必要があります。

さらに、示談を成立させ、被害者の許しを得ることが重要になります(「③犯罪後」に関連)。

被害者が許すのであれば、検察としても、起訴する必要性がないとして不起訴処分の決定を出しやすくなるでしょう。

暴行罪で逮捕された方は、不起訴処分の獲得が大きな目標になります。

主張の検討、証拠の収集、示談の成否は、弁護士の熱意と技量に大きく影響されますから、刑事事件に注力する弁護士を選任することが重要となります。

まずは当事務所へ、お気軽にご連絡ください。

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